大阪地方裁判所 昭和43年(ワ)1374号 判決
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〔判決理由〕一、原告主張の一、の事実は当事者間に争なく、同二、の事実中訴外山口実が昭和四二年四月二日当時被告が訴外株式会社栗本鉄工所から請負つていた大阪市住吉区柴谷町四の三の同会社住吉工場敷地造成工事現場にあつた原告所有の日立製UIO6ショベル一台を移動させるべく運転を始めた際右ショベル車を工事現場の横の住吉川に転落させたことも当事者間に争がない。そして<証拠>を総合すると次の事実が認められる。即ち被告は前記の通り株式会社栗本鉄工所から請負つた工事のうち防潮堤コンクリートの破壊及びそのはつり工事を訴外山口忠蔵に請負わせ、山口忠蔵は更に右工事を訴外北野勝に下請させていたものであるが、事故の発生した昭和四二年四月二日の当日は北野勝が原告から賃借していた本件ショベル車を使用して防潮堤のコンクリートの破壊工事を、山口忠蔵が破壊跡のはつり工事を夫々行い、一方山口実は被告に雇われ被告指示に基づき被告のダンプカーを運転して山口忠蔵らの工事により生じたコンクリートの破片等を取片づけてこれをダンプカーで他に搬送する業務に従事していた。ところが当日は原告会社の従業員であり本件ショベル車の運転手である大石某が二日酔で仕事ができないと云つて右ショベル車を山口忠蔵等の仕事場に放置しこれを取り除けなければその日の仕事ができないような状態にして帰つてしまつたため、やむなく車の運転に若干経験のある山口実が右ショベル車の位置を移動させることになり、前記大石がエンジンの鍵も車に差し込んだままにしておいたのを幸いに右ショベル車の運転台に乗込みこれを運転しようとしたところ、同人はショベル車についての知識が十分でなくこれを運転するについて適切な処置を講じなかつたため、ショベルは住吉川の方に後退して横転し、その結果ブームの部分が途中で折れた外車のエンジン及び車体の一部が塩分を含んだ住吉川の河水につかつてしまつた。以上の事実が認められ、他に右認定を左右するに足る証拠はない。被告は山口実は山口忠蔵の子であり同人の従業員であるというが、前記認定の事実から明らかなように同人は忠蔵の子ではあるが当日は被告に傭われて被告の業務に従事していたのであり、かつ本件ショベル車の運転は、当日の山口忠蔵及び被告の作業を続けるについてその妨害となる、本件ショベル車の位置を移動せんがためにしたものであるから、それによつて生じた右損害は山口実が使用者たる被告の業務の執行につき生じた損害であるというべきである。
ところで<証拠>を総合すると、原告は(イ)右の通り川に転落したショベルを川から吊上げるため及びこれを修理工場等へ運搬するための費用として金一〇五、〇〇〇円を要し、(ロ)ショベル本体の修理費に金五五二、八四七円を支出し、(ハ)ブーム部分の修理に金二五六、三〇〇円を要し、以上合計金九一四、一四七円の損害を蒙つた。のみならず原告は本件ショベル車を他に賃貸し一時間三、二〇〇円一日平均二五、〇〇〇円の賃料収益をあげていたところ、本件事故のため一二日間はこれを賃貸使用することができず、そのため三〇七、二〇〇円の得べかりし利益を失つた事実が認められる。そうすると、被告は民法第七一五条によりその被用者たる山口実が原告に加えた以上合計金一、二二一、三四七円の損害を賠償すべき筋合いであるが、さきに認定した事実より判断すると、本件事故の発生には原告の従業員たる大石の過失即ち同人が本件ショベル車を作業場の中に放置しこれを取り除けなければその日の仕事ができないような状態にしたまま帰宅し、しかも右ショベルのエンジンの鍵を抜いて持帰らずに誰でも容易にこれを移動させられるようにしておいたことがその一因をなしていることが認められるから、右大石の過失をも斟酌すると被告の賠償額は金八〇万円に減額するのが相当である。(谷野英俊)